プロデューサーのアリソン・グリーンスパンは、2006年に出版されてメディアから高く評価されたミシェル・ウィルジェンの小説「You're Not You」を初めて読んだ時に、衝撃を受けたと語る。ALSを患う父と叔母を持つ彼女は、著者ウィルジェンが病気と正面から向き合ったことに感銘を受けたと語る。「プロデューサーとしてめったにないことだけれど、このストーリーに心を奪われて、頭から離れなくなったの。ALSを患う人々の尊厳を表現しているところが好きだったけれど、互いに助け合う二人の女性を描いた娯楽作品としても心を動かされたわ」

グリーンスパンはパートナーのデニーズ・ディ・ノヴィと共に、ケイト役の俳優を検討し、困難に立ち向かう女性を数多く演じてきたヒラリー・スワンクこそ適任だと考えた。その後、スワンクがこの小説を読み、役だけでなくプロデューサーとしても参加すると約束した時、プロジェクトは勢いよく動き始めた。「私と共同プロデューサーのモリー・スミスは、小説を読んですぐに心を奪われたの」とスワンクは振り返る。「考えるまでもなく参加を決めたわ」
監督はブロードウェイ作品の演出家として名声を確立しているジョージ・C・ウルフに依頼された。「ジョージに脚本を渡すと、彼は気に入って黙々と仕事を進めたわ。物語と心が通じ合ったようで、とても意欲的だった。彼なら刺激的でユーモアのある映画を作れると確信したわ」とグリーンスパンは振り返る。

ウルフは、ケイトとベックが全く異なる人物像である点に引きつけられたと語る。「ケイトは向上心があり、完璧主義。反対にベックは自由で、何事にも縛られない性格。ベックはその「自由」をケイトの人生に持ち込み、それによってケイトは解放される。一方、ケイトはベックの人生に「向上心」を与え、ベックは地に足の着いた生活を送るようになるんだ」

ウルフは、人生で最も辛い壁にぶつかったとしても、そこに訪れる明るさやユーモア、高揚感を描きたかったと語る。「本作は、たとえ何かを失ったとしても、前向きに生きようとする強さや喜びを感じさせてくれる物語なんだ」
スワンクはALSを正確に描写し、ケイトの感情を深く掘り下げたいと考え、大規模な調査を開始した。ALSの多くは人生の最盛期に発症する。米国人の患者は3万人を超え、そのうち約1割は十数年生きることができるが、平均余命は2年から5年だ。筋力の衰えは四肢、会話、嚥下に影響を及ぼし、呼吸不全へとつながる。一方で知能には影響がなく、知覚は正常に働いたままだ。

ALS患者たちとの出会いについて、スワンクが語る。「素晴らしいパートナーに恵まれている方もいたわ。助け合う人々は心が震えるほど美しく、愛する人が身近にいることの大切さを思い出させてくれた。明日何が起こるかなんて誰にも分からない。彼らは毎日一瞬一瞬を生きている。私たちも見習うべきよ」

ベック役には大規模な公開オーディションが行われたが、エミー・ロッサムが現れた時、オーディションは終わった。「ヒラリーと向き合える人物を探 し回ったけれど、エミーには皆が一歩引くほどの衝撃があった。彼女とヒラリーが一緒になれば、どれほどの爆発力が生まれるのか楽しみだったわ」と ミスは振り返る。また、グリーンスパンが付け加える。「エミーはとても魅力的だった。タフな外面の内に、弱さを隠し持っていたの」
スワンクはケイトの夫のエヴァンを演じたジョシュ・デュアメルに驚かされたと語る。「今回のような役を演じるジョシュを初めて見たけれど、とても存在感があったわ。核心を突いた質問をして、キャラクターを完全に再現してくれたの」。

デュアメルは、一見しただけでは内面が分からない夫婦を演じることに興味を持ちつつも、妻の心が最も傷つきやすい時期に浮気をする夫を演じるのは気が進まなかったと話す。「エヴァンは本当に妻を愛していたんだ。だからこそ、ある日突然、妻の世話係になってしまうことは、耐え難かった筈だ。彼は、夫婦生活で肉体関係が無くなってしまった悲しみから妻を裏切り、それがどれほど彼女を傷つけたのかは、後になるまで気が付く事ができない。それでも僕がエヴァンという役柄に惹かれたのは、最終的に一番大切な人のところに戻ってくる姿だった」
ウルフはリアリティを追求するために、何十年もALS患者の支援をしてきた公認看護師メアリー・ベス・ガイズをコンサルタントとして招き、スタッフ、キャストと共にALS患者がどのように動き、話し、時間と共に変化していくかを学んだ。また、世話をする過程における身体的な問題についても指導を受けた。さらにウルフはALSコミュニティのメンバーを迎え、ALS患者にエキストラとして出演してもらった。

音楽に関しても、リアリティを追求している。本作のサウンドトラックは音楽監督のジョナサン・ワトキンスが手掛けたのだが、ロッサムが歌う曲に関しては、最後まで苦戦したと言う。ワトキンスは語る。「いくつかの名曲を検討したが、ベックにぴったり合う曲はなかった。最終的にベックの性格を細部まで理解しているエミー本人が、この美しい曲「Falling Forward」を作ってくれたんだ。彼女はベックがケイトへの信頼を深めていく様子を忠実に捉え、友への愛情を見事に表現してくれた」