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『犬神家の一族』はどの版がいい?原作ファンがおすすめを紹介【決定版】

2023年4月に放送され、衝撃のラストで話題を呼んだNHK版『犬神家の一族』。

9月8日に再放送され、再度SNSをわかせましたね。

大竹しのぶさんの演技に鳥肌が立った人が続出です。

数ある横溝正史作品の中でも人気が高く11回も映像化されている『犬神家の一族』。

「たくさん作られているけれど、結局どれがいいの?」

こういう疑問は当然、出てきますよね。

この記事では横溝正史ファンで、子供の頃から横溝正史シリーズの再放送を見てきた筆者が決定版をご紹介します。

目次

『犬神家の一族』とは?

『犬神家の一族』のあらすじ

長野県で製糸業を営んでいた富豪 犬神佐兵衛(いぬがみ さへえ)が81歳の生涯を終えるところから話が始まります。

犬神佐兵衛は立志伝中の人。

17歳までは乞食同然の生活を送っていたのですが、神官 野々宮大弐の家で教育を受け、巨万の富を築きました。

犬神佐兵衛には3人の娘と、彼女たちが生んだ孫がいましたが、遺言書に「自分の孫3人の誰かと結婚すれば、全財産は野々宮大弐の孫である野々宮珠世に譲る」と書いたことから惨劇の火ぶたが切って落とされます。

『犬神家の一族』の見どころ

大富豪の一族、代々伝わる家宝、政略結婚のたくらみ、命を狙われる美女、見立て殺人、不気味なマスクをかぶる復員者など横溝作品らしいモチーフが満載。

松子・竹子・梅子三姉妹の骨肉の争い、湖から突き出た脚など派手な演出、陰惨な復讐譚が有名な作品です。

金田一耕助とは?

作品の主人公は私立探偵 金田一耕助。

横溝正史が創作した名探偵の一人です。

彼は1946年に出版された『本陣殺人事件』で初登場。

身長は低く、やせ型でやや貧相な体形です。

この身体つきのため、洋服が似合わず、普段は和服を着ています。

原作から金田一耕助を描写した文章を抜粋してみました。

「年ごろ三十五、六、もじゃもじゃ頭の、風采のあがらない小柄な人物で、よれよれのセルに、よれよれの袴といういでたち、口を利くと、少しどもるくせがある。」

「いたってひょうひょうたる風貌を持った探偵」

横溝正史『犬神家の一族』(角川文庫)より

※「セル」とは「セル地」の略で、平織り薄手の毛織物のこと。合着用和服地です。

色白で、人懐こい笑顔、興奮すると頬が赤くなるのが特徴。

洞察力と推理力を兼ね備えた頭がいい人物で、実は渡米経験があるため英語を話せます。

江戸川乱歩の明智小五郎、高木彬光の神津恭介と並んで「日本三大名探偵」と呼ばれることがあります。

金田一耕助が最も有名かもしれませんが、この三人を比べると経歴・境遇は一番地味ですね。(笑)

明智小五郎は美しい妻を持ち、事務所を構えていますし、神津恭介は眉目秀麗・頭脳明晰の東大医学部教授で6か国語が堪能なだけでなくピアノも弾けるチートです。

歴代 金田一耕助で原作に近いのは誰?

今まで最も多くの作品で金田一耕助を演じたのは古谷一行さん。

昔はテレビでコメンテーターが「原作に最も近いといわれる」と評していましたね。

ここは「あなた、原作読んでいないでしょ?」と突っ込むところです。(笑)

前述したとおり、古谷一行さんは金田一耕助の外見とさほど似ていません。

今まで、数々の名優が金田一耕助を演じていますが、あまり原作に忠実にしようとは考えていない様子。

渥美清さん、高倉健さん、中井貴一さん、豊川悦司さん、稲垣吾郎さん、池松壮亮さんなど、イメージとはかけ離れた人物が演じたこともあります。

エルキュール・ポワロを演じたデヴィッド・スーシェのような決定版はまだいないのが正直なところ。

NHK版の吉岡秀隆さんは原作に「近い」方ですね。

私の感想としては、一番近いのは若き日の石坂浩二さんですかね。

身長は高く、端正なお顔立ちですが、笑顔が原作同様、見る人をなごませる力を持っています。

『犬神家の一族』最高峰は1976年映画版

以上の点を踏まえると、決定版は1976年に公開された映画版『犬神家の一族』ですね。

監督は市川崑。

出演は石坂浩二さん、島田陽子さん、あおい輝彦さん、坂口良子さん、岸田今日子さん、高峰三枝子さん、草笛光子さん、小沢栄太郎さん、三國連太郎さん。

定説通りで申し訳ないですが、これが最高ですね。

なんといっても原作者の存命中に作られていますし、カメオ出演もしています。

後の映画やドラマに与えた影響が大きいです。

佐清のマスク、湖から突き出た裸の脚、人物造形など、この映画から始まったものは多いです。

(原作では佐清のマスクは精巧な作りで、本人の顔を模してあります。湖の遺体はパジャマ姿です。)

この映画でも原作にすべて忠実というわけではなく、原作をわかりやすくまとめて不気味さと陰惨さを強化した印象です。

小説はもっと人間関係がこみ入り、予想外の展開が多く見受けられます。

飲み込めるまで何度も読み返せる本と、一瞬で次のシーンに移行する映画ではストーリー展開に差があっても仕方ないのかもしれません。

1976年版はキャスティングと俳優たちの演技が圧巻。

野々宮珠世を演じた島田陽子はまさに絶世の美女ですし、運命に翻弄されながらも意志を貫く強さを持った女性を演じ切っています。

犬神佐兵衛は若い頃、美少年だった設定にぴったりの三國連太郎。

犬神松子を演じた高峰三枝子は、この映画で強烈な印象を残しました。

音楽もこの作品が持つ雰囲気を盛り上げています。

まとめ

結末を知っていても、何度も楽しめるのが横溝作品の魅力です。

NHK版で興味を持った方はぜひ、過去の作品も見てくださいね。

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