数々の漫画賞に輝いた山田鐘人原作、アベツカサ作画の漫画『葬送のフリーレン』。
2013年9月からアニメが放送されています。
原作に忠実な作画、セリフ、落ち着いた音楽と演出で見応えのあるファンタジーに仕上がっていますね。
「『葬送のフリーレン』はつまらない」という声がありますが、そんなことはありません。
たしかに『葬送のフリーレン』には『呪術廻戦』のような派手なアクション、『【推しの子】』の予想を裏切り続ける展開、『SPY×FAMILY』のようなわかりやすさはありませんが、味わい深いすてきな作品。
作品の勘所(かんどころ)さえつかんでいれば、一見そっけない主人公にとまどうことはなくなります。
この記事ではアニメ『葬送のフリーレン』の見どころを解説したいと思います。
原作『葬送のフリーレン』とは?
原作漫画は2020年、『週刊少年サンデー』に発表され、連載が続いています。
現在、単行本は11巻まで刊行。
第14回マンガ大賞、第25回手塚治虫文化賞新生賞受賞作です。
あらすじ
10年間の冒険を経て、魔王を倒した一行。
自称イケメンの勇者ヒンメル、酒好きな僧侶ハイター、表情が読めない戦士アイゼン、エルフの魔法使いフリーレンの4人です。
凱旋パーティーの最中、50年に一度観測できるエーラ流星がきらめき、ヒンメルは喜びましたが、フリーレンは満足できません。
フリーレンは空気が澄み切った、星がよく見える場所で育った様子。
「50年後、エーラ流星がもっときれいに見える場所に案内する。みんなで見よう」
年を取らないエルフ族であるフリーレンは仲間にそう約束し、魔法を収集する旅に出ます。
50年経ち、約束を思い出したフリーレンは年老いたヒンメルたちの姿を目の当たりにすることになります。
人間とは時間の流れが違うエルフ族のフリーレン。
「時間」に対する感覚が違います。
再会は果たせたものの仲間たちの臨終に立ち会うことになりますが、感情の起伏が乏しい種族であるだけに思いを言葉にできず…。
諸行無常、時の流れ、他人とのかかわり方、友情や信頼、勇気。
物語は淡々と流れますが、深いテーマを扱っています。
『葬送のフリーレン』物語の魅力
『葬送のフリーレン』は冒険譚の終わりから始まります。
魔王を倒し、後の人生に思いをはせるヒンメル、ハイター。
長寿のため、10年の試練があっという間だったフリーレン。
この「落差」の描かれ方がユニークですね。
物語の終わりから始まるという手法は文学では昔から使われていて、日本の近代文学では堀辰雄『聖家族』が有名ですね。
ストーリーは主要人物の告別式から始まります。
終結からの再生、新しい物語の幕開け。
最初に原作漫画を読んだときには思わず、「うまい」と声が出ました。(笑)
少年誌に連載されていますが、手法はかなり文学的。
そして、フリーレンはある目的を持って再度ヒンメルたちと行った冒険の道をたどることになります。
過去と現在がきれいに交差する設定。
美しいですね。
また、街の様子など時代の流れがきめ細かく描写されていて作者のセンスを感じさせます。
仲間を想うことで精神的に成長し、冒険を上書きしていくヒロイン。
この構造だけでもわくわくしませんか?
『葬送のフリーレン』アニメはここがすごい!
透明感のあるキャラクター、繊細なタッチ、細かい描き込みの原作を見事にアニメ化した制作スタッフさんの技術に驚嘆。
フリーレンとフェルンの長い髪が風に乗る様子、風にふくらむスカート、魔法の描写など見事ですね。
さすがはマッドハウス。
『千年女優』、『東京ゴッドファーザーズ』、『時をかける少女』、『パプリカ』など名作を世に送り出したアニメ制作会社の名に恥じない仕事ぶりです。
特に現実と幻想の境界線があいまいな作品の演出がすばらしくうまいと思っています。
これからの展開も期待大。
まとめ
『葬送のフリーレン』は一見、淡々としていますが深いテーマを扱った作品。
内容はやや文学的です。
派手な戦闘シーン、熱いアクションはありませんがじんわりと心に染み入るストーリー。
秋にぴったりのファンタジーです。
気になった方はぜひ、見てみてくださいね。