2023年7月に配信されたNetflixオリジナルドラマ『御手洗家、炎上する』。
原作は藤沢もやしの同名漫画です。
今まで『全裸監督』『今際の国のアリス』『羣青』『愛なき森で叫べ』などショッキングな作品を制作・配信してきたNetflixにしてはやや地味な選択と思っていましたが、予想を上回る出来上がり。
Netflixで世界2位に輝いたのですから、反響の大きさに驚きますね。
今回は『御手洗家、炎上する』のあらすじ、ドラマの見どころを解説したいと思います。
藤沢もやし『御手洗家、炎上する』のあらすじ
開業医を父に持つ村田杏子(村田 あんず)は子供の頃に起きた自宅の火災で多くを失った女性。
火事が原因で、両親は離婚。
杏子と妹の柚子(ゆず)は母親と共に家を出ました。
名前は御手洗姓から、母の旧姓である村田に変わり、裕福な生活から一転して貧しい暮らしが始まります。
母親 皐月(さつき)はショックで記憶喪失になり、入院。
自分の娘たちのことさえ覚えていない状態です。
杏子たちと入れ違いに御手洗家に入ったのは、母の友人だったシングルマザー渡真希子とその息子2人。
真希子は後妻として御手洗家の女主人になります。
杏子は13年前の火災現場で挙動不審な真希子を目撃しており、事件への関与を疑っています。
成長した杏子は名前を「山内しずか」と偽り、御手洗家に家事代行として潜入しますが…。
自分から家庭を奪った女性に復讐を決意したヒロイン杏子、裏表があり、虚栄心が強い真希子、訳ありの息子、彼らを取り巻く周囲の人々。
それぞれの思惑が交錯する心理サスペンスです。
藤原もやし『御手洗家、炎上する』の見どころ
まず、タイトル。
「炎上」と聞くと「ネットでたたかれること」と思うのが現代人。
そこをあえて外して冒頭に火事の場面を持ってくるところがうまいですね。
そして「ネットの炎上」の線は後で回収しています。
つかみはばっちりです。
あらすじを読んで「かなりベタなストーリー」と思った方、いらっしゃいますよね。
若い女性が主人公の復讐物は、たくさんあります。
古くは山本周五郎『五辯の椿』、松本清張『霧の旗』など枚挙にいとまがありません。
少女漫画でも、復讐物はひとつのジャンルですよね。
私も『御手洗家、炎上する』第1巻を読んだときには「絵柄と設定が古い。いつの作品?」と思いましたよ。
ですが、藤原もやしは女子高内カーストを描いた『17歳の塔』の時から「負の感情」を描かせるとうまい漫画家さん。
そして、小道具の使い方が絶妙です。
『御手洗家、炎上する』でもニット、バレッタ、サンドイッチ、イヤリングの使い方が印象的。
読んでいるうちに、多少の強引さは気にならなくなり、ラストまでページを繰る手が止まりません。
藤沢もやしの描く女性は、口が悪かったり、執念深かったり、人間味がありますね。
朝ドラの主人公みたいに綺麗ごとばかり口にするキャラクターは、うさん臭くてイライラするじゃないですか。
その点、藤沢もやしの描く人物はデフォルメされていても、バランスがとれていると思いますね。
Netflixドラマ『御手洗家、炎上する』の見どころ
Netflixオリジナルドラマは全8話。
英語名「Burn the House Down」。
各話41〜54分。
出演は永野芽郁さん、工藤阿須加さん、中川大志さん、恒松祐里さん、北乃きいさん、濱田マリさん、吉瀬美智子さん、鈴木京香さん、及川光博さんほか豪華な顔ぶれです。
原作に忠実でいながら、御手洗真希子の華やかな生活は贅沢度1,5倍。
杏子と真希子の生活格差が画面で見て、非常に分かりやすいです。
そのため、復讐物プラス『家政婦は見た!』のような「のぞき見要素」が加わって視聴者の興味をかき立てる趣向。
あざといですね。(笑)
また、キャスティングが成功していますね。
杏子役の永野芽郁さんはNHK連続テレビ小説『半分、青い』のイメージが強かったので、暗い表情は新鮮。
一瞬、誰かと思いました。
こんなに演技の幅が広い女優さんだったんだ、と永野芽郁さんの演技力を再確認しましたね。
御手洗真希子役の鈴木京香さん。
悪役を見るのは久しぶりですね。
NHK大河ドラマ『新選組!』のお梅を思い出しましたよ。
妖艶さと腹黒さを表現できる力量、20年前から外見が変わっていない自己管理能力がすばらしい。
鈴木京香さんは、真希子役をすごく楽しそうに演じていますね。
そういえば以前、風間杜夫さんが「悪役の方が演じていて楽しい」とおっしゃっていました。
今回『御手洗家、炎上する』の鈴木京香さんを見ていて、納得しました。
ころころと表情が変わって、人形浄瑠璃みたい。
御手洗家の長男で引きこもりの希一を演じた工藤阿須加さん、本当に小汚い姿で体当たり熱演。
話題をさらっていますね。
全体的に、どの俳優さんものびのびと演技しているのが伝わってきます。
現場の空気がいいのでしょうか。
見ていて、こちらも楽しくなりますね。
まとめ
海外進出するドラマはわかりやすさが肝心です。
その点、『御手洗家、炎上する』は戦略勝ち。
昔の昼ドラのようなストーリーでも、資金力と一流のスタッフによる演出があれば見事なドラマに出来るという「お手本」のような作品です。
日本人には、どこか懐かしさがただようドラマ。
興味がある方はぜひ、見てみてくださいね。